5. 座標・変形

イラストなんかを描くときには、一つ一つのオブジェクトのサイズを気にしないことが多いけれど、デザインをするときには、位置やサイズを正確な数値で描く必要があるよね。

ポイント
■ アートボード上で座標の原点を最初に決めておく。

■ オブジェクトを変形するときは、変形の基準点を意識する。
■ 拡大・縮小するときは、線幅や効果を意識する。

もし、以下のような指示があったら、ささっと描けるかな?

アートボードの左上の角を座標の原点に設定し、アートボードの左から12 mm、上から14 mmの位置に、幅50 mm、高さ50 mmの正方形(線幅:1 pt、線の色:K100、塗り:なし)を描きな。
①の正方形を、横幅だけ1.618倍になるように変形しな。左側を起点とし、線幅は変えないものとするよ。
②の長方形を縦横ともに2倍になるように変形しな。左上を起点とし、線幅も拡大するものとするよ。
※ 線の位置(パスの中央・内側・外側)については任意とするよ。

「そんなの簡単」という人は、このページはスキップしてOK。
「ちょっと不安」という人は、いっしょにやってみよう。

まず、A4(ヨコ)のアートボードを用意して。
参考:ドキュメントの新規作成

座標の原点を設定する

ドキュメント新規作成すると、最近のバージョンではアートボードの左上が座標の原点になっている。

X: 0 mm
Y: 0 mm

Xは横方向、Yは縦方向。
ここを起点に、右へ行くほどXの数値が大きくなり、下へ行くほどYの数値が大きくなるよ。
以前のバージョンでは、アートボードの左下が原点で、上へ行くほどYの数値が大きくなる。)

今日の指示は「アートボードの左上の角を座標の原点に設定」だから、ここでは何もしなくてOK

でも今後、例えばB4サイズのアートボードにA4サイズの版下台紙を描いて、「仕上がりサイズの左上を原点にしたい」って思うこともあるはずだよね。
こんな場合のために、座標の原点の設定する方法を説明しておこう。

以前のバージョンを使っていて、アートボードの左上の座標が「X: 0 mm、Y: 0 mm」になっていないときにも、同じやり方で原点の位置を変更できるよ。

まず、[表示]メニュー→[定規]→[定規を表示](command+R)を選択。
ウィンドウの左と上に[定規]が表示されたかい?

[定規]が表示された状態

ウィンドウの左上の角(「左の定規」と「上の定規」が交差しているところ)でクリックしたら、そのまま「原点にしたい点」までドラッグし、マウスボタンを離そう
これで、原点が変更されるよ。

原点の変更で注意しなければいけないのは、塗りに「パターン」を使っている場合
「パターン」の開始位置は「原点」と関連しているから、「パターン」を使っているドキュメントでは、作業の途中で原点を変更すると、パターンがズレてしまうよ。

座標の原点を変更すると、パターンの位置がずれてしまう

ちなみに、デフォルトの定規は「ウィンドウ定規(グローバル定規)」と呼ばれていて、複数のアートボードにわたる座標を示すようになっているよ。


アートボードが複数ある場合で、各アートボードで原点を設定したいときは、[ウィンドウ]メニュー→[定規]→[アートボード定規に変更]を選択して、「アートボード定規」にすればいい。

指定されたサイズの四角形を描く

四角形を描く前に、「線の色:K100、塗り:なし」を先に指定しておこうか。
[ウィンドウ]メニュー→[カラー]で[カラー]パネルを表示して、「線の色:K100、塗り:なし」にするよ。

線の幅は、[ウィンドウ]メニュー→[線]の[線]パネルで確認。
線幅は1 ptになってるかい?

続いて、幅 50 mm、高さ50 mmの正方形を描こう。
[長方形ツール] を選択した状態で、アートボード上の適当な位置をクリック。
[長方形]ダイアログで、幅:50 mm、高さ50 mmと入力し、[OK]

位置を決める

次に、正方形を「アートボードの左から12 mm、上から14 mmの位置」に移動しよう。

[選択ツール] で正方形を選択した状態で、[ウィンドウ]メニュー→[変形]を選択して表示される[変形]パネルを表示させてみて。

[変形]パネル

まず、正方形の左上を「位置や変形の基準点」にするよ。

次に「X」に「12 mm」「Y」に「14 mm」と入力すれば、「アートボードの左から12 mm、上から14 mmの位置」になるだろ。
これで指示①が完了。

横幅だけ変更する

続いて、指示②の「横幅だけ1.618倍になるように変形」

「縦横どちらも」ではなく、「縦だけ」あるいは「横だけ」の場合には、まず[変形]パネル[縦横比を固定] を切った状態 にするよ。

で、50 mm×1.618の計算は「ちょっと面倒だな」って思うだろ。
安心しな。数値を入力するときには、Illustratorが簡単な計算もやってくれるぞ。

足し算:+
引き算:-
掛け算:*
割り算:/

ここでは、幅(Width)を1.618倍にしたいのだから、「W」の
「50 mm」の右側に「*1.618」と入れて[enter]。
「H: 50 mm」は変わらないまま、「W: 80.9 mm」になったかい?

ここで、[線]パネルで線幅を再度確認してみよう。
さきほどの「1 pt」が保たれているかな。

もしかすると、「1.272 pt」になってしまった人もいるかもしれない。
この原因は、このあとの説明でわかるから、ここでは[線]パネルで[線幅]を「1 pt」に修正しておこう。

ここまでで、指示②も完了。

線幅を拡大する

③の指示では「縦横ともに2倍になるように」だから、さっきの[変形]パネルで、「縦横比を固定」がつながった状態 にして、幅(W)を「80.9 mm*2」にすればいい。 高さ(H)を「50 mm*2」としても同じことだ。

まだ、この操作をしないで待っててな。
もうやっちゃった人は、[command]+[Z]で取り消して

今度は「線幅も拡大」しなきゃいけなかったね。
ツールバーの[拡大・縮小ツール] をダブルクリックして、[拡大・縮小]ダイアログを開こう。
長方形を選択している人は、選択を解除([選択ツール]でアートボードの空白部分をクリック)してからな。

[オプション]の中に[線幅と効果を拡大・縮小]というのがあるよね。
これにチェックを入れておけば、拡大したときに線幅も拡大されるんだ。
(※[ファイル]メニュー→[環境設定]→[一般](command+K)の[線幅と効果も拡大・縮小]で設定しても同じ。)

さっき線幅が「1.272 pt」になってしまった人は、すでにチェックが入っている状態だっただろ?

[変形]パネルで拡大するときも、[拡大・縮小ツール]を使って拡大するときも、ここの設定が生きていることを忘れちゃダメだぞ。

「線幅」のほか、ドロップシャドウのような「効果」「パターン」などについても、拡大・縮小するかどうかを決めなきゃいけないからな。

[線幅と効果を拡大・縮小]にチェックを入れたら、[OK]で[拡大・縮小]ダイアログを閉じよう。
この状態で[変形]パネルを使って2倍(*2)にしてみな。

「幅(W)161.8 mm、高さ(H)100 mm、線の太さ2 pt」の四角形が出来上がったかい?

[拡大・縮小ツール]をダブルクリックして、忘れないうちに[線幅と効果を拡大・縮小]のチェックを外しておくといいよ。

ワシは基本的に[線幅と効果を拡大・縮小]のチェックは外しておいて、「必要なときにだけチェックする」と決めているよ。どっちの設定にしていたか忘れてしまうからな。

ついでに言うと、ロゴ、マーク、イラストなんかの最終データを作るときは、「線幅なし」の状態にすることが多いぞ。

「線幅なし」の状態

ロゴやイラストのデータを利用する第三者が、うっかり[線幅と効果を拡大・縮小]のチェックを入れたまま拡大・縮小してしまったら、線の太さのバランスが崩れてしまうからな。

以下の例では、[オブジェクト]メニュー→[パス]→[パスのアウトライン]のあと、[ウィンドウ]メニュー→[パスファインダー]→[合体]を行っているよ。

あとの修正が難しくなってしまうから、これをやる前のデータは別に取っておいて、納品用のロゴ(最終データ)なんかのときにやるようにな。

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