8. 文字組み

初期のバージョンでは、文字組みの機能が不十分だったり、大量の文字を組むと動作が重くなったりしていたけれど、今は組版機能が充実してきているよ。

4ページくらいのパンフレットであれば、ワシはIllustratorで作ってしまうことがほとんどだ。16ページを超えたらInDesignを使うことが多いな。

ポイント
■「エリア内文字」と「エリア内でない文字」を使い分ける。

■ 文字組みは「段落スタイル」を利用する。
■ 文字組みには基礎知識が不可欠。

[文字ツール]の種類

ツールバーの[文字ツール]を長押しすると、いくつもの種類のツールが格納されていて、圧倒されてしまうかもしれないな。

でもよく見てみると、「(縦)」と名前が付いているツールは、文字を組む方向が「縦組み」というだけ、つまり同名のツールの「縦書きバージョン」というだけのことなんだ。
「縦組み」か「横組み」かは、[書式]メニュー→[組み方向]でいつでも切り替えられるしな。

[パス上文字ツール][文字タッチツール]は、いわば「変化球」。
基本ができるようになったら、これらを使って遊んでみればいいよ。

[エリア内文字ツール]というのは、このあと説明するけれど、[文字ツール]でも代用できる

つまり、普通に使うぶんには、[文字ツール]だけで十分ということなんだ。
(主に縦組みで使う人は[文字(縦)ツール]だけ)

「エリア内文字」と「エリア内でない文字」

さっそく[文字ツール] を選択して、アートボード上の任意の場所をクリックしてみよう。

最近のバージョンでは、「山路を登りながら」というサンプルテキストが勝手に入力されるな。
これは夏目漱石の『草枕』の一節だそうだ。[エリア内文字ツール]だと、さらに長いサンプルテキストが割り付けられるようになっている。

これが必要ないという人は、[Illustrator]メニュー→[環境設定]→[テキスト]の[新規オブジェクトにサンプルテキストを割り付け]のチェックを外せば出てこなくなるぞ。

ワシは[合成フォント]のサンプルテキストが好きだから、今日はこっちを使おう。
漢字・平仮名・片仮名・英数字がバランスよく使われているのがいいだろ。

グーテンベルクが活版印刷術を発明したのは1440年代後半といわれています。それから約20年後の1465年、その新しい技術はアルプスを越え、イタリアに伝わりました。ドイツから来たSweynheimとPannartzという二人がローマの北にあるSubiacoという村の修道院に滞在し、そこでイタリア最初の印刷物をつくったのです。

Adobe IllustratorおよびInDesignの合成フォントのサンプルテキストより引用

このサンプルテキストをコピーして、さきほどの「山路を登りながら」と置き換えてみよう。
そもそもサンプルテキストが入力されていない人は、そのままペーストな。
こんな感じで、ダラーっと長くなったかい?

この状態を何と呼ぶのか、正式な名前が付いていないようだから、仮に「エリア内でない文字」としよう。
「エリア内でない文字」は、自動的に改行されないから、例えば1〜2行の「キャッチコピー」をポンと配置するときに使ったりする。

次に、さきほどと同じ[文字ツール]アートボード上の左上あたりをクリックしたら、今度はマウスボタンを押したまま右下までドラッグして、そこでマウスボタンを離してみよう。

環境設定で[新規オブジェクトにサンプルテキストを割り付け]にチェックが入っている場合は、サンプルテキストが自動的に割り付けられる。

サンプルテキスト「情に棹させば流される。智に働けば⋯⋯」が自動入力されないようにしている人は、「グーテンベルクが活版印刷術を⋯⋯」をこの四角形の中にペーストしてみて。
これが「エリア内テキスト」だ。今度は右側で折り返すようになっているよな。

ある程度の行数があるテキスト、いわゆる「本文」のようなものは、このように「エリア内テキスト」にする。
一般的には[行揃え]を[均等配置(最終行左/上揃え)]の状態にするね。

先に長方形を描いておいて、左上の角の内側あたりを[文字ツール] でクリックしても、同じように「エリア内テキスト」を作成できる。

このテキストエリアの中に「見出し」その他の「段落スタイル」を設定することも、もちろんできる。

「エリア内文字」「エリア内でない文字」は、目的に応じて使い分けていくといいよ。

段落スタイル

フォント、文字サイズ、行送りといった、文字組みの設定は、ほとんどすべて[段落スタイル]の中でできるから、文字を扱うものを制作するときは、最初に基本となる[段落スタイル]を1つ、きちんと作り込んでおくといいぞ。

基本となる[段落スタイル]を1つきちんと作っておけば、他の[段落スタイル]を作るときには、それをコピーして、一部を変更すればいいだけだからな。

まず、[ウインドウ]メニュー→[書式]→[段落スタイル]で、[段落スタイル]パネルを表示してみよう。

デフォルトでは[標準段落スタイル]だけが入っているけれど、ここに自分で作った[段落スタイル]をどんどん追加していけばいい。

今日はとりあえず[標準段落スタイル]をダブルクリックしてみよう。
[段落スタイルオプション]の画面が開いたかい?

画面左側の「一般」、「基本文字形式」、「詳細文字形式」⋯⋯をひとつずつ選択して、その中身を設定していけば、おおむねの体裁が整うはずだ。

一方、[文字スタイル]([ウインドウ]メニュー→[書式]→[文字スタイル])は、段落の一部分の書式を変えたいときに使うよ。例えば、以下のような感じ

段落設定の「奥」にある設定

前項で「文字組みの設定は、ほとんどすべて[段落スタイル]の中でできる」と書いたけど、「ほとんど」と言ったのは、「[段落スタイル]に含まれるけれど、他で設定しなければならないもの」があるからだ。

合成フォント

[書式]メニュー→[合成フォント]で、以下のような画面が表示される。

ここでは、和文フォントと英文フォントの組み合わせ、いわゆる「混植」の設定をする。
漢字と仮名で異なるフォントを組み合わせて使うときなんかも、ここで設定しておけば、「一部分ずつ選択してフォントを変更する」なんてことをしないで済むからな。
作成した合成フォントは、通常のフォントと同様に[段落スタイル]内でも指定できる。

禁則処理設定

[書式]メニュー→[禁則処理設定]で、以下のような画面が表示される。


「弱い禁則」に比べて、「強い禁則」のほうは、音引き(ー)や拗促音小字(っ、ゃ、など)が行頭禁則になっていたり、「¥」や「〒」が行末禁則になっていたりするね。
独自に禁則処理したい文字がある場合には、ここでカスタムの処理セットを作ることができるよ。

文字組みアキ量設定

[書式]メニュー→[文字組みアキ量設定]で、以下のような画面が表示される。

例えば、「全体的に仮名を詰めたいから、和文と欧文の間のアキや、句読点の後ろのアキなんかも、もうちょっと詰めたいな」というようなときは、ここで「アキ量」を設定することができる。
最初のうちは難しいだろうから、ネット上で配布されているものをダウンロードしたり、先輩が使っている設定を使わせてもらえばいいと思うよ。

文字組みについて学ぶ

ここまで読んで、「なんだか面倒くさいなー」と思った人もいるかもしれないな。

文字組みを使わない人、たとえばロゴやイラストの制作で使う人は、ここのページは気にしなくていいぞ。
でも、文字を扱うデザイナーの場合には、絶対に避けて通れないことだ。

美しいデザインをする人はみんな、文字組みにしてもそうだし、写真にしてもそうだし、一つ一つのものを丁寧に作るという積み重ねをしているんだよ。
「アイデアとセンスでチャチャっと」やってるわけじゃないからな。

ここで必要なのは「Illustratorについての知識」じゃなくて、「日本語文字組版」「欧文組版」の知識だ。
少しずつ勉強していくようにしよう。

いくつか参考書を紹介しておこうか。

日本語文字組版

文字の組方ルールブック ヨコ組編
文字の組方ルールブック タテ組編(日本エディタースクール)
安いというのが何よりもいい。
ただ、あくまでもこれは「教科書的な基本」であって、実際には「一般ルールではこうだけれど、こういう目的があって、あえてルールどおりにはしない」っていう柔軟さが大切だぞ。

組版原論―タイポグラフィと活字・写植・DTP(府川充男/太田出版)
プレミアムが付いて、だいぶ高くなっちゃったな。
今みたいに「InDesign」や「OpenType」なんかがない時代に、QuarkXPressで1行ずつテキストボックスを作って組むというスゴいこだわり。美しい組版のお手本。

真性活字中毒者読本―版面考証/活字書体史遊覧のほうは、もう少し安く入手できる。

基本日本語文字組版(逆井克己/日本印刷新聞社)
図解が多く、シンプルでわかりやすい。
今見たら、これもプレミアムが付いてた⋯⋯。

Adobe InDesign 文字組み徹底攻略ガイド 第3版(大橋幸二/ワークスコーポレーション)
「文字組みアキ量設定」については、InDesignの本も参考になるよ。

最近のものでは、向井裕一さんの著書もいいな。

欧文組版

欧文組版 組版の基礎とマナー (タイポグラフィの基本BOOK)(高岡昌生/美術出版社)
最近、〔増補改訂版〕 欧文組版: タイポグラフィの基礎とマナーとして、烏有書林から改訂版が出てるな。ワシは以前のほうしか読んでないけど。
欧文組版の最高峰「嘉瑞工房」の高岡昌生さんの著。「高」の字は、正式には「はしごだか」な。

欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)(小林章/美術出版社)
小林章さんは、ヘルマン・ツァップさんやアドリアン・フルティガーさんとも仕事をしていた、日本における欧文書体デザインの第一人者。
欧文書体 2 フォントのふしぎもいいぞ。

ワシが学生時代に写植を頼んでいた朗文堂さんも、文字組版に関する良書をたくさん出版してるよ。

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