9. カラー(色)

オブジェクトに色を付けるにはさまざまな方法があるから、「これが正しいやり方」ということはなかなか言えないんだ。
ここでは参考として、ワシが印刷を前提としたデータに色を指定するときの方法を紹介するよ。

ポイント
■ 印刷物のカラーはカラーチャートで確認する。

■ 特色(スポットカラー)、オーバープリントなどに注意する。

Illustratorのカラー関連の機能

従来からおなじみの[カラー][スウォッチ]に加えて、近年は[カラーガイド][Adobe Colorテーマ]などの機能も登場してきた。

[オブジェクトを再配色]でカラーバリエーションを作ることは、ウェブデザインや、「テーマ」などのカラーバリエーションが必要なインタラクティブなデザインにおいては、とりわけ便利だろうと思うよ。

ただワシは、[オブジェクトを再配色]とは全く異なる思考回路で配色を計画しているし、印刷物においては「インキで刷られた状態」を常に意識しなければならないということもあって、[カラーガイド][Adobe Colorテーマ]を使うことはほとんどないな。

[オブジェクトを再配色]ダイアログ

印刷物のカラー

例えば、以下の2色はどちらも明度が高く彩度が低い、いわゆるパステルカラーの「仲間」といえるだろ?
けれど、これらを印刷したときのCMYK値は、左は「0・30・0・0」右は「25・0・35・0」となって、網点の密度インキの重なりという観点で見ると、けっこう印象が違うよ。
この差異が問題にならず、2色を同等に扱える場合もあるけれど、そうでない場合もある

あるいは、太さ0.1 mmの線(ワシらの世代は「オモテケイ」と呼ぶよ)の色を考えるとき、上の「金赤(0・100・100・0)」なら、網点がない状態でシャープに印刷される一方で、下の「グレー(0・0・0・30)」では、網点によって線がかすれてしまう

金赤(上)と淡いグレー(下)の細い線(イメージ)

色の調和の良し悪しがもちろん第一ではあるけれど、「インキで刷られたときにどういう状態になるか」というイメージを持つことも、印刷物をデザインするときには重要なんだ。
印刷インキはグラフィックデザイナーにとっての「絵の具」だからな。

ワシは頭でイメージしたカラーを、必ず印刷された「カラーチャート(プロセス4色掛け合わせ一覧表)」で確認するよ。
実際に印刷した場合には、紙の違い(コートの有無、表面のテクスチャ、紙色など)によって色が相当異なって見えるものだし、印刷機が輪転機か平台かによっても変わるけれど、モニターで見るよりはずっと仕上がりのイメージがつかみやすいぞ。

DIC セルリング型カラーチャート 第4刷

スウォッチを使用したカラーの指定

あくまで参考として、ワシがどのようにカラーを指定しているかを紹介しよう。

まず[ウィンドウ]→[スウォッチ]で[スウォッチ]パネルを表示して、[なし]、[レジストレーション]、[ホワイト]、[ブラック]以外の色はすべて削除してしまう。
ここにデフォルトで入っているものは、「[スウォッチ]パネルでは、パターンやグラデーションを登録したり、グループ分けしたりすることもできますよ」という機能紹介みたいなもんだからな。

次に、頭の中でイメージしているカラーを、カラーチャートで数値を確認しながらスウォッチに登録していく。

スウォッチ名は、よほど古いバージョンでなければ、自動的に「C=0 M=100 Y=100 K=0」のように命名されるから、そのままの名前で使えばいいよ。
あとでまったく違う色に変更する可能性がある場合、「○○ブルー」みたいな名前が付いていないほうが楽だからな。

もちろん場合によっては、例えば、似た色がたくさん必要なときなんかは、「light blue 01」「light blue 02」のように名前を付けたほうが便利だろうし、会社のVIで規定されている「コーポレートカラー」なんかも、名前を付けてしまったほうがわかりやすいだろうな。

自分で使う色を[スウォッチ]パネルに追加

[スウォッチオプション]で、[カラータイプ]必ず[プロセスカラー]にする。
[特色]にすると、次項で説明する「 特色(スポットカラー)」の扱いになって、出力時にCMYK以外の版ができてしまうからな。

プリント時に[すべての特色をプロセスカラーに変換]というオプションもあるけれど、これを当てにして、4色印刷なのに「 特色(スポットカラー)」を使ってはだめだぞ。

それから、ワシは基本的にいつも[グローバル]にチェックを入れるよ。

スウォッチのアイコンのラベルの違い

「グローバル」にしておくと、その色を指定しているオブジェクトの色をまとめて変更できるし、「A色の20%」のように、その色のシェードが簡単に作れるからな。

「グローバル」のカラーでは、その色のシェード(元の色の○○%)が簡単に作れる

「ほかのオブジェクトの色はまとめて変更したいけど、この円だけは元の色のままにしておきたい」というときは、その円を選択した状態で、[カラー]パネルの右上の[パネルオプション]から[CMYK]を選べばいい。
その円だけが「グローバル」のカラーから外れた状態になるぞ。

この状態でスウォッチの色を変更した場合、右端の円は元の色(グリーン)が保たれる

特色(スポットカラー)

特色(スポットカラー)は、CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)以外の色のインキのことだ。
雑誌の表紙の「蛍光ピンク」とか、2色印刷でK(ブラック)と組み合わせるとか、掛け合わせの色よりも輪郭をシャープに見せたいときとか、さまざまな場面で利用されているよ。
えっ、金色? 金の特色もあるけど、パッケージなんかによく使われているやつは「箔押し」だ。

特色(スポットカラー)は、[ウィンドウ]メニュー→[スウォッチライブラリ]→[カラーブック]で選べるようになっている。
日本では[DIC カラーガイド]、アメリカでは[PANTONE]がメジャーだな。

この場合にも、色見本で実際の色を確認しないとだめだぞ。

DIC カラーガイドPART1 1巻・2巻・3巻 第20版

特色を使ったデータの作り方は、印刷会社やケースによって異なるから、必ず印刷屋さんに確認すること。
料金は普通の4色印刷よりも高くなるし、ネット印刷のサービスなどでは、そもそも対応していないことも多いから、注意してな。

「ホワイト」の意味

Illustrator上で「ホワイト」を指定するというのは、どういうことになると思う?

「ホワイト」は白のインキで刷られるわけではなくて、CMYKのどの色も刷られていない状態、つまり「紙の地が見えている状態」になるんだよ。
[ファイル]メニュー→[ドキュメント設定]の[紙色のシミュレート]にチェックを入れてみても、「ホワイト」はそのまま表示されてしまうから、なんだか心配になるかもしれないけど、大丈夫。

下図のように文字を白く抜きたいときは、単に文字に「ホワイト」を指定しておけばいい。

このときに注意すべき点は、「ホワイト」に「オーバープリント」を設定しないようにすることだな。
[ウィンドウ]メニュー→[属性][塗りにオーバープリント][線にオーバープリント]にチェックが入っていると、その部分は印刷されないぞ。
PDFから素材を切り出したときなんかは、自動的に黒のオブジェクトにオーバープリントが付いちゃってることがあるから、それを白抜きで使いたい場合なんかには、気をつけてな。

ホワイトにオーバープリントは厳禁

下図のように、白抜きの文字の下に別のオブジェクト(グレー)が見えているようにしたい場合は、文字と正方形を選んだ状態で[ウィンドウ]メニュー→[パスファインダー]の[前面オブジェクトで型抜き]にする必要があるぞ。
[option]キーを押しながら、[パスファインダー]パネルの[前面オブジェクトで型抜き]ボタン を押せばいい。(従来のバージョンでは、文字をアウトライン化しないとだめだったり、[option]を押すときの挙動が逆だったりしたかもな。)

キーボードの[option]キーを押しながら、[前面オブジェクトで型抜き]ボタンをクリック
白抜きの文字の下に別のオブジェクト(グレー)が見える状態になった

オーバープリント・トラップ

前項でオーバープリントの話が出たけれど、そもそも「オーバープリント」「トラップ」などの意味がわからない人は、概要を勉強しておかないといけないぞ。
これは、印刷に関する知識だよ。

Adobe Illustrator マニュアル『オーバープリントについて』

Adobe Illustrator マニュアル『トラッピングについて』

オーバープリントやトラップは、RIP(Raster Image Processor)で自動的に処理する場合もあるし、ネット印刷などでは、「オーバープリントは使わないでください」というところもあるから注意してな。

次のページへ